電波系LASシリーズ第1弾

 

『名探偵アスカ』

 

 

 

 私、惣流・アスカ・ラングレー!

 中学生探偵として、世界中に有名よ!

 こら!ケンスケ、お前の世界は校内だろって失礼なヤツね!

 アンタも少年探偵団の一員だったんでしょ。

 小学1年生のあの一年…。

 楽しかったな…。

 転校生のアイツに引っ付いて、大人の事件に首を突っ込んで、色々な事件を解決したわ!

 ま、解決したのは、いつもアイツだったけどね!

 

 でも、ある日、突然アイツは姿を消した…。

 どこに転校したのか、まるでわからなかったわ。

 アイツだけじゃなく、レイもいなくなった。

 事件に巻き込まれたのかもって、レイの保護者だった赤木博士のところに行ったけど、
 親元に引っ越したんだと言われて、それまで。

 大人たちも残った少年探偵団のメンバーをまるで相手にしなかった。

 それから、ケンスケもマユミもすっかり探偵熱が失せちゃったよのね。

 私一人だけが、探偵に対する興味を持続していったわ。

 ジュブナイルに始まって、古今東西の探偵小説を読破していった。

 だって実際の事件に接することなんか、なくなっちゃったんだもん。

 

 それからね、私のアイドルは『東の名探偵』六分儀シンイチさん!

 きゃっ!もう、だ〜い好き!

 『西の名探偵』とかの鈴原ナントカなんか目じゃないわ。

 一回だけ顔を合わせたことのある怪盗ネルフもカッコ良いって思ったこともあるけど、
 ネルフが逮捕されて正体が加持なんとかってオヤジだってわかったら、
 ネルフなんてもうどうでもよかったわ。

 う〜ん、シンイチさんのあの一見頼りなげに見える雰囲気。母性本能をくすぐるのよね。

 なんとなく、アイツに似た雰囲気があるし、さ。

 ただ一つ気に入らないのは、婚約者とかの霧島マナっていうツルペタよ!

 実はアイツが居候してた探偵事務所の一人娘だったから、
 あの頃は『マナお姉さん』なんて慕ってたけど、
 シンイチさんのファンになってからは、もう敵よね!

 でももう、シンイチさんも25歳。

 そろそろツルペタとゴールインなんて言われてる。

 やだなぁ…。

 って言っても、ただの中学生の私にはどうしようもないんだけどね。

 

 ところが、ある日シンイチさんが失踪しちゃったの!

 8年前にも1年ほどいなくなっちゃった事があったらしいんだけど、
 そのときは私は小学1年生だったから、よく知らないの。

 今回は新聞やテレビで騒がれて、事件に巻き込まれて殺害されたんじゃないかって。

 アスカ、大ショック!

 

 はぁ…。

 私は窓の外を眺めていたわ。

 ホームルームなんて、くだらないわ…。

 早く大人になりたいな…。

 それで、私立探偵になって幾多の何事件を解決して、
 『世界の名探偵』になるの。

 それで…。

 それでね…。

 本当の夢は、アイツを探し出すことなの。

 アイツと一緒にいたあの時間が忘れられないの。

 好きだったんだ、アイツ。

 アイツのホッペにキスしたこともあったわよね。

 今頃、アイツ、どこでどうしてるんだろ?

 え?ああ、転校生か。どうでもいい…。

 ええっ!

 へ?あれ?

 アイツが、教室の前で、自己紹介してる。

 嘘…。

「僕の名前は、碇シンジっていいます。趣味は探偵です」

 アイツがにっこり笑ってる。

 8年前に、私を虜にした、あの笑顔で。

 ガタンッ!

 私は椅子を倒して立ち上がったわ!

 私はアイツを指差して、口をパクパクさせた。

 だって言葉にならないんだもん。

 アイツは私を見つめて、こう言ったの。

「久しぶり。アスカちゃん」

 私は何度も頷いたわ。声が出てこないから。

 先生は私を着席させて、知り合いだったらって、席替えをして私の隣にシンジを座らせてくれたの。

 なかなかいい教師じゃないの、アンタ。

 そして、シンジは私の隣に座った。

 私はじっとシンジの顔を見つめることしか出来なかったわ。

「ただいま」

「お、おかえり」

「もうどこにも行かないからね」

「うん!」

 

 シンジの秘密はしばらくしてから、全部聞いた。

 そんな非科学的な!って思ったけど、私はシンジを信じたわ。

 レイにもう一度薬を作ってもらったんだけど、
 希望通りの年齢に戻る方法が難しくて、それで8年掛かっちゃったんだって。

 それから、シンジは私と同じマンションに部屋を買ったのよ。

 さすがは名探偵。報酬を隠し金してたみたい。

 今日からはお隣さんなの。ご飯は全部作ってあげるからね。

 レイはシンジのこと好きだったんだけど、研究の方を選んだそうよ。

 嘘よね、それって。シンジは鈍感だから気が付いてないけど。

 今もレイは赤木博士のところにいるらしいから、今度遊びに行って慰めてこよっと。

 大人になってるレイを慰めるってのも、ちょっと変かな?

 

 どうして帰ってきたかというと、
 シンジはあの時、小さくなって私たちと探偵していた時がとても楽しかったんだって。

 元の身体に戻ってしまうと、
 どうしてあの時はあんなに元に戻りたかったのかわからなくなって、
 何度か私たちの様子を窺ってたの。

 それで、一途にアイツの事を想い続けてる私に、胸キュンになっちゃったんだって!

 嬉しいこといってくれるじゃない!

 でも決してロリコンじゃないのよ、シンジは!

 ちゃんとあの事件の時に10年後の私の写真を見ていたから、
 美人になるのは確定していたしね。

 それにマナの鈍感と暴力に耐えられなくなったんだってさ。

 私もこれから暴力は控えることにするわ。

 だって、もう二度とアイツを離したくないんだもん。

 ツルペタから逃げて、私のところへ帰ってきたシンジを。

 私はシャーロック・ホームズでも何でも、シンジと同レベルでお喋りできるもの。

 探偵小説に無学なツルペタとは違うわ!

 

 六分儀シンイチはこの地球上に二度と姿を現さないんだけど、もう私には関係ないわ。

 私は碇シンジさえいたら、それで他には何もいらないの。

 

 これからの夢は『世界のラブラブ探偵夫婦』なのよ!

 う〜ん、アイツが望むなら、『ラブラブ怪盗夫婦』でも『ラブラブ黒の組織夫婦』でもいいけど。

 アイツと二人だったら、何だって出来るし、何だってするわ!

 

 何か、文句ある?

 

『名探偵アスカ』  第1話&最終回(さいしょでさいご)

 

 


 <あとがき>

この作品は自前のサイトでSSの紹介をしていなかったときに、タームさんのサイトの私の作品に感想を送っていただいた方々へ、御礼として添付したSSです。送られた方も困ったと思いますが…。
『コ○ン』なら、アスカは和葉だろうが!というのが普通でしょうが、私は"普通"はしません。

これは洗濯機を回してる間に書いた、27分SSです。
こういう電波系SSは短時間で仕上げるのがパターンなのです。
時間をかけると、どんどん悪くなってしまいますので…。

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